top of page

ガンガ族

ガンガ族(Ganga)

 

19世紀にはキューバ中西部の全奴隷数の10%〜15%を占めるほどいたガンガ各部族の伝統を引き継ぐグループは現在ほとんど残っておらず、またガンガ族について書かれた文献も非常に少ないことから、未だに明らかになっていない部分も多いようである。

 

起源

 

彼らに関する資料は少なく、彼らがアフリカの何処から連れて来られ、何語を話していたのか、それも現在未だ明らかではない。

 

しかし、言語学的見地から、大きく三つの語群のいずれかに属していたのではないかと考えられている。

1)ベヌエ・コンゴ語群 2)マンデ語群 3)西大西洋語群

 

1)を推す説は地理的にその出所を特定してはいないものの、一般的にベヌエ・コンゴ語群という場合カメルーン以南のアフリカ全体で話される言語を含む。

 

2)は、シエラ・レオーネとリベリア、また現在のマリ共和国にあったワンガラ族の領土に由来するのではないかという説。

 ※ワンガラ族はソニンケ族からの分派でマンデ語群に属する。

 

3)の説でもシエラ・レオーネとリベリアをそのルーツとしている。

 

これらの説以外にも、また別の語群に属する異なる部族がそのルーツではないかとする説もある。

 

また、キューバに連れて来られたガンガ族は、それぞれの出所などによって、

ガンガ・アリエロ(Ganga-arrieros)

ガンガ・フレエス(Ganga-frees)

ガンガ・フィレス(Ganga-fires)

ガンガ・ロンゴワ(ロンゴバ)(Ganga-longowá(longobá))

ガンガ・マニー(Ganga-maní)

ガンガ・キシ(Ganga-quissi)

などと呼ばれていた。

 

キューバ人ジャーナリスト、イスラエル・モリネルの記事によると、アリエロ、フレエス、フィレスなどはセネガンビアに由来する事は明らかであるが、マニー、キシ、ロンゴバはコンゴの領土に由来するのではないかということである。

 

それらコンゴの領土に由来すると言われる部族に関して、17世紀中頃までに起こった様々な民族の移動の過程でバントゥ語族の地域に定住するようになったのではないかとしている。

 

前記のようにガンガ族は多くの部族に分かれるのであるが、部族間の対立もしばしば見られたようで、ガンガ族として政治的、文化的にまとまった社会を形成することはなく、それ故にひとつの文化としての体力が弱く、新大陸において、時代の流れと共に他の文化に同化し消失していったのではないだろうか。

 

キューバにおけるガンガ族

 

冒頭に述べたように、ガンガ各部族の伝統を引き継ぐグループは知られておらず、研究者の間でもキューバにおける彼らの伝統は絶えてしまったように思われていた。

 

しかし、1983年の調査によってマタンサ(Matanzas)から南東へおよそ80キロのところにあるペリコ(Perico)の町にガンガ・ロンゴバ族の末裔が今も彼らの文化を引き継いでいることが明らかになった。

 

彼らは母権社会を築いており、顔に引かれたライン、耳には金属の輪っかのピアス、右腕に引かれた2本のライン、そしてすきっ歯など外見的な特徴がある。

 

(ガンガ・ロンゴバの)信仰

 

彼らの存在が長らく知られていなかったのは、彼らの信仰が口頭伝承によるもので、親族と彼らに近しい人々によってのみとり行われる、閉ざされた世界での信仰だったからであろう。

 

今なおその伝統を受け継いでいる家系には次の姓のものが挙げられる。

ディアゴ(Diago)

レスカジェス(Lescayes)

フィゲロア(Figueroa)またはラウサン(Lauzán)

 

また、ブロンという彼らの儀式を司るのは女性で、彼らの信仰の中には、代々受け継がれて来た土着文化の痕跡が見受けられる。

 

彼らの神とヨルバの神には類似性がみられ、その儀式においてもそれぞれの神に対してのウタと踊りがあり、バタのような両面に牛の皮が張られたアボカドの木で出来た4本の太鼓とカウベルなどで演奏される。

 

しかし、サンテリアなどからの影響によって、彼らの伝統から大切なものが失われているのも事実である。

 

古来伝わってきた部族の占い・予言術(現在はサンテリアのものが用いられている)      

・神々の名称の変更             

・儀式や信仰に関わる段取りなどの忘却

など。

 

サンテリアからの影響が大きく、彼らもまた、創造主であり至高の存在の唯一神であるオロドゥマレというサンテリアと同じ名の神を信仰している。また、教義も似てきているようで、サンテリアでイエス・キリストに相当するオロフィ、精霊に相当するオロルンも存在する。

 

イスラエル・モリネルが調査の際出会った人々の、この宗教を実践するその動機としては以下のものが挙げられる。

・男性  健康上の理由、家族の伝統、精神の成長、物質的充足

・女性  健康上の理由、家族の伝統、恋愛関係 

 

神との交信にはサンテリアと同様貝殻などを用いた予言や、降霊、祈祷などが行われ、また、彼らの信仰においても動物の生け贄が捧げられる。

 

各信仰ごとの聖人対応表

ガンガ・ロンゴバの聖人ヨルバの聖人キリスト教の聖人

 

Guewá(Gueguá)EleguaS. Antonio

 儀式の開始と終了を司り、あらゆる道の主である。

 祭壇における居場所は、入口の扉の後ろ。

  Guewá(Gueguá) の色は赤と黒で、ヤシの葉で編んだ帽子(Sombrero de guano)と杖を持っている。

 

NoúOggúnPedro

 あらゆる金属を司る者

 

YeyéOchúnVirgen de La Caridad del Cobre

 Yeyéの色は黄色で、その特徴は蜂蜜を用いるところにある。

 

Yansalire (Oyá)OyáSta.Teresa

サンテリアのように頭の守護者ではないが、固有の色も持ち物もOyáと同じ。

 

La ViejaObbataláLa Merced

 

YebbéBabalú-ayéSan Lázaro

 Babalú-ayé と同様に袋で出来た服をまとい、あらゆる病気と果実と大地を司る。

 

MambaChangóSta.Bárbara 

 雷と稲妻を支配する者。色は赤と白。

ガンガの聖人の名前の中で、マンバの名前だけが現存する文献の中に同様 

の名前で現れ、また、シエラ・レオーネにあるマンバという山は、聖なる山とされている。

 

ObbeYemayáV.Regla 

 

DadaDada→(該当無し)

 

  • 記載のないものはサンテリアのサント(聖人/神)を参照。後日アップ予定(09.05.11)

 

ルンバへの影響

 

本当のルンバの踊り、そのルーツはガンガにある。

それはキューバの年配のモレノの間ではごく当たり前な事と認識されているようである。

 

しかし現存し活動しているのはペリコのガンガ・ロンゴバのグループのみなので、統計学的にその事を証明する事は出来ない。

 

しかしある調査の結果、踊りや音楽的な面で、ガンガの踊りや音楽とルンバとの共通点は多く見られるようである。

 

しかしまた、同調査は以下のように結論づけている。

『19世紀に誕生したと考えられているルンバにおいて、ガンガ族の音楽的影響は少なからず見受けられるが、それは19世紀においてガンガ族が数の上で優勢であったからに過ぎず、ルンバはアフリカ由来のいずれかの部族に由来するものではなく、様々な部族の文化が混ざり合いキューバにおいて誕生した新たな音楽の一種である。』

 

ルンバの起源に関しては、ガンガ族との間にどんな共通点があるのか、なども含め改めてまとめたいと思う。

参考:

Presentación Los Ganga en Cuba(スペイン語)

ナイジェリア(ヨルバ)
マンデ族
bottom of page