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コンゴ part.2 

〜コンゴの宗教『パロ(Palo)』〜

パロ・モンテ(Palo Monte)

 

 大西洋奴隷貿易によって連れて来られたコンゴ族によって伝えられた信仰で、死者の霊(とくに先祖の霊)と共に水の霊、動物の霊、鉱物や大地の霊、 そして草木の霊を崇拝する。シャーマニズムと交霊術、魔術が混じり合った信仰。
パロ・コンゴ(Palo Congo)、パロ・モンテ(Palo Monte)、単にパロ(Palo)とも呼ばれる。

 サンテリアなどのその他の混交宗教(とくにキリスト教との)とパロとの決定的な相違点は、前者はそれぞれの植民地において奴隷達が自分達の信仰を守るためにキリスト教を取り入れたのに対し、後者はアフリカにおいて既にその信仰の中にキリスト教が取り入れられていた点にある。

大きく3つの宗派に分かれる。

パロ・マジョンベ (Palo Mayombe )
 最もルーツに忠実で他の宗教との混交が少なく、ポジティブなまじないとネガティブなまじないのどちらをも用いる。

パロ・ブリジュンバ ( Palo Brillumba / Briyumba )

 パロ・マジョンベから派生した宗派で、キリスト教、レグラ・デ・オチャ(サンテリア)との混交があり、現在もっとも知られているのはこの宗派。 ポジティブなまじないを行う。

パロ・キンビサ ( Palo Kimbisa )

 この宗派は19世紀に入りアンドレス・ペティによって創設され広く広まった。サンテリアやキリスト教、アバクアやブードゥを信仰の中へ取り込み、もっとも混交の進んだ宗派と言える。 『サント・クルサード』あるいは『パロ・クルサード』とも呼ばれる。 サンテリアのオリチャ、カトリックの聖人、キンビサのンプングはよく似た性質を有している。 現在は主流の宗派ではない。 ポジティブなまじないのみを行う。

パロとは?
 スペイン語で『棒』などを表すパロは、この場合単に『木』を意味し、 精霊達の宿る『木』という意味で用いられている。

信者の数は?
 正確な数はわかっていないが、現在は世界中で信奉されている。 奴隷時代を通じ主にキューバで信仰されていたが、20世紀中頃から様々な国のアフリカ系民族やその他白人の間でも信仰されるようになっている。

司祭
 パロを信仰する聖職者の最初の位を『パレロ(男性)( Palero )』、『パレラ (女性)( Palera )』、または『(ン)ガングレロ( Ngangulero )』、『(ン)ガングラ( Ngangulera )』 と呼ぶ。
魔術と占いの修行を積んだスペシャリストである。
また、パレロのことを『タタ( Tata ) ( お父さん ) 』、パレラのことを『ヤヤ(或いはジャジャ)( Yaya ) (お母さん) 』とも呼ぶ。

信者になるための要件
 同性愛者は認められていない。
入信後信者は『(ン)ゲイ(Nguey )』もしくは『(ン)キシ(Nkisi)』(子供) になるのであるが、その前に精霊によって入信が可能な精神の持ち主であるかどうかを見定める『(ン)キンバ(Nkimba)』、『ラジャミエント(西 語)(Rayamiento)』と呼ばれる面接がある。
そしてその後に『タタ』、『ヤヤ(ジャジャ)』となり『(ン)ガンガ (Nganga)』を身につけるための修行が行われる。

 

教会/寺院
 パレロ(ラ)によって神聖化された寺院を『ムナンソ(Munanso)(家のこ と)』と呼ぶ。

聖書
 パレロの聖書に相当するもの、『(ン)トゥアン(Ntuán)』。
『(ン)トゥアン』を含め、パロの伝統の大部分は師匠から弟子へと代々口頭伝承によって受け継がれる。 今日では多くのタタが後世に自身の知恵、知識を残すべく本にまとめようと努めている。

教義と信仰の基礎
 パロの寺院では『キンプングーロ (Kimpungulo)』、『(ン)プンゴス (Mpungos)』、『(ン)キタ (Nkita)』『(ン)キシ (Nkisi)』と呼ばれる様々な階級の精霊を扱う。
それは、木々に、水に、また自然界の様々な物質に宿る精霊、そして、 サンテリアの神(オリシャ)と関わりのある偉大な先祖の精霊。
 パロの儀式の多くは、これらの精霊の力によって通俗的な、あるいは精神的な願いを成就させようとするもので、その儀式にはお供えや生け贄、そして祈りと魔術が用いられる。
 パロ崇拝の中心に位置付けられる聖具は『プレンダ (Prenda)』、 すなわち『(ン)ガンガ ( Nganga )』で、鉄製の3本脚の鍋のような容器。
『プレンダ』の中には精霊との会話を容易にするために様々なものが入れられている。
それは、骨(死者の精霊にとっての故郷)、木々、聖草等々、古くはシャーマニズムの儀式に用いられ、また闇つまり悪を司ると考えられている品々である。
 パロの精霊との交信手段は、交霊術、口寄せ、占いで、それらについて極めるべく入信者は修行を重ねていくのである。

精霊の階級

最高神 

(ン)サンビ(Nsambi)       

 最高神、創造主。全ての存在と宇宙を支配し統 治する神。

ルンゴンベ(Lumgombe)   

 (ン)サンビに内在する負の実体。最高神。 様々な面でキリスト教の悪魔と類似している。


精霊
(ン)キタ(Nkita)           

 木々、川、水、空気などの自然界のあらゆる 要素に宿る精霊

 

(ン)フンベ(Mfumbe)(=死者)    

 幽霊。死者や先祖の霊。
 

ンフン(Nfun)            

 浮遊霊(彷徨える精霊)、幽霊

 

バカル(Bakalu)          

 先祖の霊
 

エグン(Eggun)           

 偉大なる力をもった先祖の精霊

 

(ン)プンゴ(Mpungo)       

 サンテリアのオリシャ、ブードゥのローアに相当する聖なる力を持つもので、多くの点で呼称や特徴が類似している。(ン)キシと呼ばれることもある。

※ Nkisiは雷や風などの自然現象や、木や水などの自然界に存在するものそのもののことで、そこに宿る精霊がMpungoと呼ばれる。


※ 参考資料により少しずつ呼称やその意味するところが異なる場合がある。


 パロの倫理規定はやや独特で、この世には2つの力が存在し、その力のバランスの不均衡が不公平や不幸などをもたらすと信じられている。 信者は精霊を用いこの自然の力を正そうと努めるのである。
時にその問題は恋愛や金銭関係であったり、学問の成就や病の治癒であったり、あるいは敵に対する復讐であったり、と扱う問題は様々である。

 

迷信と誤解
 パロは黒魔術の一種だと思われているが、それはパロが(ン)フンベス、 つまり『光』の精霊や(ン)ドキ(Ndoki)と呼ばれる『闇』の精霊や幽霊などを自在に操ることが出来るからであろう。 パロにおいて呪術が用いられることはあまりなく、パロの目指すところは他の信仰と同じく光の精霊の発達と成長、そして進歩である。
また、パロはサンテリアの一部、あるいはサンテリアの闇の部分だと思われているが、この誤解はサンテリアの入信者がパロのラジャミエント(入信の許可)をも得ようとすることにその原因があると思われる。
パロは全く別の信仰で(様々な面でサンテリアに類似してはいるが)、その起源を別に持つ信仰である。

その他
 コンゴに由来する宗教はキューバ以外の国にもある。 ブラジルはその代表的な国で、コンゴ族の信仰はウンバンダ(Umbanda)、 キンバンダ(Quimbanda / Kimbanda)、カンドンブレ(Candomblé)などの名前で 知られており、キューバのパロに伝統的にもっとも近いものはキンバンダ である。
また、ジャマイカやバハマに辿り着いたコンゴの信仰はクミナ(Kumina) と呼ばれている。


(ン)プンゴ

 

ルセロ(Lucero)
 神々からのメッセージを伝える者。道の守護神。 しばしば靴下を履き、しっぽを付けたコミカルな 悪魔として描かれ、そのシンボルは鈎。サンテリアのエレグア、ブードゥのレグバに相当し、 いたずら好きで、時に幼稚で時に激しい。

センテージャ(Centella)    

 墓地、風、市場を治める。 サンテリアのオジャ、ブードゥのママン・ブリジッテに相当する。

 

サラバンダ(Sarabanda)

 鉄や血、戦いや崇高な復讐を司る。サンテリア、ブードゥのオグン

シエテ・ラジョス(Siete Rayos)

 稲妻と炎を司る。 正義や感情、インスピレーションの化身。サンテリアのチャンゴー

マードレ・アグア(Madre Agua)

 大洋、母性、創造性を司る。 サンテリア/ジェマジャ、ブードゥ/ レモジャ

ママ・チョーラ(Mama Chola)

 川、愛、美、富と喜びを司る。 サンテリア/オチュン、ブードゥ/ エルズリエ

ティエンブラ・ティエラ(Tiembra Tierra)    

 大地と人類の創造主。宇宙を 治めている。サンテリアのオルドゥマレ

コバジェンデ(Kobayende)

 死と病を司る。ババル・アジェ

マリグアンダ(Mariguanda)

 生と死の扉の番人。オジャ・ジャンサ

グルンフィンダ(Gurunfinda)

 森と草を司る。オサイン

キンバブーラ(Kimbabula)

 占いと風を司るオルンミラ

ワタリアンバ(Watariamba)

 狩りとたたかいを司る。オチョシ

ママ・ケンゲ(Ma Kengue)

 知識と正義を司る。オバタラ

参考
Palo Mayombe
http://www.elbrujo.net/Palo_Mayombe.htm


Wikipedia (Palo)

http://es.wikipedia.org/wiki/Palo_(religi%C3%B3n)

 

Palo Monte
http://www.cubanmotives.com/Espanol/Articulos/Maria_Vizcaino/ palo_monte.htm

Palo Mayombe
http://ar.geocities.com/orixas_iledeoya/palo_mayombe.html

コンゴ Part.1
バントゥ(語族)
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