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Antítesis
セルフライナーノーツ

 そもそも今回のアルバムが何故『Antítesis』なのか。

レコーディングも終わりミックスが進む中、さてアルバムタイトルをどうしたものかと随分思案しました。アイデンティティーというものを前面に押し出すのかどうか。レコーディング段階では前作の流れを引継ぎ『Rezo 〜祈り〜』をタイトルにしようと思っていたのですが、この曲のアレンジのインパクトが強いので、それではこの曲にばかり目が行き過ぎて他の曲が霞むんではないかということで他のタイトルを考えることになりました。

そこで最大公約数を見出すべく何度もアルバム全体を見渡し、ようやく辿り着いた答えがアンチテーゼでした。

 

 メインテーマに対して異なる角度から新たなテーマを提起すること。

 

前作以降、あらゆる可能性を試してみようと思い制作を続けて来ました。

日本語のみでの作詞、日本語・スペイン語を織り交ぜた作詞、これまでどおりスペイン語のみの作詞。そして作曲やアレンジ。

その結果歌詞の内容も楽曲も本作は前作にも増してバラエティーに富んだものとなりました。

そしてカタチになったそれらを改めて振り返ったとき、全体を表すタイトルとして相応しい言葉はアンチテーゼではないかと思い至ったのです。

 

 自分も含めメンバーそれぞれの思いが詰まったこの作品が少しでも多くの人の元に届きますように。

 この曲が手元に来た時は今とは全く違う曲で、歌詞が書き上がった後にやーそにアレンジされてテンポもリズムも変わってしまった曲。
結果的にはカッコいい曲になったんですが、元からこのアレンジならこの歌詞は書いてないだろうなあ。

 歌詞を考える前から前作のMañanaのような雰囲気でとても気に入っていて、きっとMañanaのような人気の曲にするんや、とかなり気合いを入れてかかった曲でした。個人的にはMañanaの続編だと思って書いた曲です。

 

 笑顔は周りのみんなも自分をも元気にします。あんまりギリギリまで頑張り過ぎないで適度にガス抜きをしないと、ね。

 NANAから曲を渡された時、最初から決まっていたテーマは『オドゥドゥワ』というサンテリーアの神様の歌でした。

 ※ オドゥドゥワは死にまつわる神秘・秘密を司る存在。

そこからどう話を紡いでいくか。この手の作詞の作業は縛りが多いので中々手を焼くんです。いつも。神様ごとに性格があるので。

 

 そこでまず出て来たのがスペイン語のパート。

「目に見える全ての物は存在するのか」

「自分が生きていると思っている人生は本当は誰かの夢なのではないか」

という懐疑主義的な登場人物Aの自問。

 自信を失い人生の意味を見失いかけ懐疑的な思いに囚われたAの自問に対し答えるのが、般若心経の中で観自在菩薩が舎利子に語りかける「色不異空~、是諸法空相~」のくだり。

 このように、場面によってAとそれに答えるB(観自在菩薩)というカタチでメインとなる登場人物が交代するので、曲中でぼくとNANAの歌っている位置が変わるのはそれを表しています。

 

 哲学の問いに対し、哲学色の濃い仏教の中でもとりわけ日本人には馴染みの深いであろう般若心経のこのくだりをAへの答えとして見つけられた時には自分でも驚きました。なにしろこのパートを考えるのに哲学の色々な考え方にも目を通し、神道の祝詞にも目を通し、最後に辿り着いたのがこの般若心経だったので。

 なので実際に般若心経を録音して下さった曹洞宗・一歩の会の方々がライブにお見えになった際、作品の出来を喜んでくださり、良い箇所を抜粋していると仰って下さったことは本当に嬉しかったです。

 

 一歩の会の方々に録音して頂くことになった経緯にも不思議なご縁があったのですが、アルバム収録曲の中でも最後に生まれたこの曲は、生まれるべくして生まれて来たような気がしてなりません。

「ぼくのともだち」や「あなたのいた風景」の題材となった方々、大切な人達、そして命について、心静かに思いを馳せる時間を与えてもらった。ぼくにとってこの曲はそういう意味でもとても大切な曲となりました。

 角の無いま〜るい言葉をふんだんに使って、何気ないどこにでもありそうな初夏の心地いい午後を、当たり前の幸せを歌詞にしてみました。

個人的に一番こだわったのはオープニングとエンディングのSE。オープニングではスズメやカラスに混じってそばで鳴いていたキジバトがエンディングでは移動して遠くで鳴いていたり、自転車が窓の外を通り過ぎていったり。なんだかほっこりしないですか?

キジバトの声を聞くとなぜかほっこりするのはぼくだけかしら。

 今回のアルバム収録曲の中でもとくに初期に出来た曲。

よしサンバを書くぞ!と思って書いた曲で、歌詞もサンバやラテンの曲(とくにTrova系のもの)によくあるテーマを題材にしてみました。

ネガティブな内容や批判的な内容の歌詞をポップなメロディーに乗せて歌ってる曲って多いでしょ。サンバにしろラテンにしろ。

 流石のやーそのコードアレンジでばっちりサンバな曲になりました!

7sonoraなんで楽器編成やリズムはラテンとサンバのミックスですけどね。

ライブの時サビをみんなで歌えたら楽しいやろうなぁ。

 スペイン語と関西弁を上手くミックス出来ると面白いんやないかなあ、と思って書き始めた曲。「ぼちぼちこ!」ってどことなくスペイン語っぽくないですか?

歌詞も日本語部分は今時誰も使わないような昭和のニオイのする歌詞にしてみました。ラップ部分以降のアレンジを随分悩んだんですが、ラテンファンクとでも言うのか、少し80年代的なニオイのするものにして、日本語部分の昭和風味と接点を持たせてみました。

武井さんのSaxがただただ素晴らしいのひと言です!!

でもこの曲の一番の聞き所はワウでカッティングをするNANAですね。お気付きでしたか?

 配信で音楽を買う時代になって、文章としての歌詞というものはどうなって行くんやろうか。レコード、CDの時代は歌詞カードを見て風景をイメージしながら曲を聴いて一緒に歌ったもんやけど。

 例えば歌に出てくる町と街。歌詞を見ないとどっちのマチだか区別は付かへんよね。淋しいと寂しい、青い空と蒼い空、なんかも。

聴覚からだけでなく視覚からもイメージを伝える、ということはナンセンスになって行くんやろうか。

 この曲は歌詞を見ないで聴くと主人公の年齢設定が分かりづらいと思います。歌詞を見て主人公の年恰好を想像して聴くと、聞こえ方が違ってくるかもしれません。

 前作の制作段階からどうしても書きたいと思っていたテーマをようやく本作で書くことが出来ました。

阪神淡路大震災のころ自分は大阪に居て被災はしませんでしたが、実家は震源地近くなので、この度の震災は他人事ではないんです。

 かの震災でも故郷を離れることを余儀なくされ、未だに帰郷出来ないでいる方が大勢いらっしゃいます。自分の両親を見るにつけその方々の思いは如何ばかりかと、心が痛みます。まして愛する人を失うなど。。。

いつまでも後ろ向きに歩いて行くことを亡くなった方は望まないでしょう。せめてあの日を、あの人を忘れず、一生懸命いまの自分を生きていかなければ。。。

 

 冒頭のチェロはキューバの1800年代半ばの「Ayres del alma」というSaumellの曲の一部で、主人公の心のうめきを表現したく引用しました。

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